スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:-- 】
スポンサー広告
苦悩の7年 ボブの謀略
激しい勢いでドアが開いた。ハッ!と目を上げたロベルタは、勢い込んで入ってくるボブ・コッカハムの姿を認めた。

「何なんだこの財務報告書は?まったく不完全で何がなんだか判んないぢゃないか!こんなものを受け取っておいて、キミは会計監査の仕事をこなしてると言えるのかね?」
「は?何の件でしょう?」
「私がトーニャに頼んで作ってもらった使途不明金財務調査書だよ!キミは会計監査としてチェックしてるんだろう?」
「…いえ、報告を受けていませんが…。」
「何だと?!この会社の財務データは全てキミ達が把握してるんぢゃ無いのか?支出入の全てが判って初めてマネージャーと言われるんぢゃないのか?そうでなくちゃ職務怠慢と言われても仕方がないな。」

ロベルタは突き出された報告書を見た。初めて見る報告書だ。作成完了日は本日になっている。そして作成者はトーニャ。パラパラと内容を見たロベルタは、これが充分な調査の元に作成されたものではないと判った。不明瞭な項目に金額が羅列されていて『詳細調査中』の言葉が並んでいる。

「すみません。このような報告がなされているのに気がつきませんでした。
すぐにトーニャに確認します。」


ロベルタは受話器を掴み、トーニャのダイヤルを廻した。

「…トーニャ。今ボブさんから報告書を見せられたんだけど…そう、それ…
いや、だからね、私は見てなくて…え?…ん…んぁ?…ん…ふん…をぁ?…
ん…をぁ?…ん…をぁ?…ん…そう…判った。」


ロベルタが受話器を置いた途端、トーニャがオフィスに飛び込んで来た。

「ボブさん。先ほどの報告書はさっきも言ったように突然の依頼だったので充分な調査時間が無くて不完全なものになった事は間違いありません。もう少しお時間を頂きたかったのです。あと1日あれば詳細を調査致しまして追ってご報告致します。」
「もう遅いよ!今日までにどうしても社長に報告しなきゃならない案件だったんだ。ワシの面目丸潰れだ!どうしてくれる?トーニャ!さては何か?不透明でやましい事があるからそれを糊塗する時間でも欲しいのか?え?どうだ?今回の報告書だって社長が使途不明金の金額に不自然な処があったから至急調査するとの仰せで始めた事なんだ。やましい事が無いんならすぐに提出出来るだろう?

ロベルタもロベルタだ!知りませんでしただと?そんな陳腐な言葉で会計監査マネージャーの務めが充分だとでも思ってるのか?責任感のカケラもないなキミ達は?」


ボブの嘲りの言葉には容赦が無かった。二人は唇を噛み締めて俯いている。それを見たボブの口調がエスカレートして来た。時には拳を握り、時には両手を広げ、ルチアーノ・パヴァロッティのように腹式呼吸を使って二人に追い討ちをかける。

「…ふん!大体だな、言われた仕事も満足に出来ないくせにマネージャーなどと笑わせてくれる。何かと言うと『時間をくれ』『報告は後でする』。頭の悪い無能社員の言い訳としては使い古された常套手段ぢゃないか!キミ達は社長の前で同じ言葉を言えるのか?あん?出来まい。そうだろうなぁ…社長にお目こぼしを貰ってる負い目があるもんな。自分の無能ぶりを社長には見せたくないもんな。あん?そうだろ?キミ達。ふふふんだ!
そんな業務姿勢をずっと続けてて今の仕事を続けられると思ってるのか?会社はそんなに甘くは無いぞ。責任を感じて辞めるんなら今のうちだぞ?ロレイホ?♪…あり?これはヨーデルだったか?はっはっはっは!


ボブの策略は巧妙だった。
膨大な数の、使途不明金の明細をごく短期間で提出させるよう強要する。当然、詳細を特定する訳にいかない使途不明金明細は不完全なものになる。財務側としては調査完了させるには長い時間を要し、会計監査側としては早急に明らかにせざるを得ない状態が出来上がる。どちらにしても両者に業務を完全に遂行する事が出来ない状況が作られ、業務不履行の汚点が発生する。

「…外部からの監査を要求します。」

ロベルタが小さな声で抗議した。ボブの目がジラリと光った。

「ほう…ロベルタ、外部に助けを求めるのか?…ふふん、それではキミは、自分の会計監査員としての資質が不充分であり、外部に頼らないとこの仕事が遂行出来ないと言っているんだな?能力不足だと?」
「…そ、そんな訳では…。しかし正当性を証明するには外部から…。」
「はっはっはっは!キミは今のキミの業務責任を放棄するんだな。そうか、キミはどうしようも無くなって逃げるのか。敵前逃亡ってやつだな。よろしい。キミの資質はよく判った。さあ、今から机を整理して帰りたまえ。キミはもうクビだ。はっはっはっは!」

「えぇぃ!キミキミうるさいわね!アタシは温泉卵か!

これがロベルタの最後の捨てゼリフだった。

次回に続く。
スポンサーサイト
【2007/05/19 00:06 】
三文小説 | コメント(2) | トラックバック(0)
<<苦悩の7年 ラリー・H・ミラー | ホーム | 苦悩の7年 リチャードの決断>>
コメント
うわひっどー!!
力でねじ伏せるやり方って納得いかないですよね。
でもそれがまかり通っちゃうのがこの世の中なんですよね・・・。

>アタシは温泉卵か!
にツボりました(笑)
ぷるんとしたのがたまらないんですよね~♪
【2007/05/20 23:50】
| URL | 小箱 #6wH.DH8I[ 編集] |
>小箱さん こんばんわ~vvv

いつの世にも悪知恵のまわる輩はいるものです。
今回の二人もそんな人達に翻弄され、それでも信念を貫き通したのです。
世の中、捨てたものでは有りませんね。

私も温泉卵が大好きでキミの部分がポワワンと…て、それアタシやん(笑)
【2007/05/22 04:56】
| URL | 凛 #W.2ysQK2[ 編集] |
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://linwuzi.blog8.fc2.com/tb.php/540-2b35e92c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。